私の家には金庫が二つある。夫と私の二人暮らしでどうして金庫が二つあるのかとよく聞かれるけれど、我が家は共働きで通帳も別々だし金庫も別々と、財産を共有していないのだ。そう答えると、「すぐに別れそう」と言われてしまうけれど、別にそんな兆候も今のところない。この距離感が、むしろ居心地いいと思える。きっと夫もそう思っているだろう。そうすると、「別れる気がないなら、財産を一緒にしちゃえばいいのに」とか言われる。だけど私からしたら「余計なお世話」以外の何物でもない。他の夫婦はどうだか知らないけれど、私達は「対等」でいたいのだ。養うでも養われるでもなく、お互いに社会人として自立した上でともに生きて行こうと決めたのだ。だから子供を作るつもりもないし、欲しいとも思わない。そうなると、老後が心配じゃないのかとかまた余計なことを聞かれるけれど、自分の老後のために子供を産むなんて子供がかわいそうじゃないの…と思う私の方がよっぽど正当性があるような気がする。だけど、世間ではそうではないらしい。私達は自分でお金を貯めて老後に備えようと思っている。もし看取ってくれる人がいなかったとしても、それはそれで構わない。
こんな風に考えるようになったのも、私の親がさんざん借金を繰り返して私がその肩代わりをしてきたからだ。両親とも自堕落な生活を送ってきたせいか、まだ若いうちから体がボロボロになり、私が面倒を見る羽目になった。と言ってもお金以外は最低限のお見舞いくらいにしか行かなかったけれど。自分の行く末は自分で責任を取ろう、と強く思ったのも、両親がそんな風だったからだ。夫の両親も私の両親と似たところがあったようなので(夫に出会ったときには夫は両親と絶縁状態だったので私もよく知らない)、私達の価値観も似ているのだと思う。かわいそうに、なんて絶対に思われたくない。夫婦でも金庫は別々、それが私達のルールなのだから。